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第41回日本産婦人科手術学会 講演予定内容

主題1: 腹腔鏡下手術時代の開腹手術を再考する
Learning Issues
良、悪性の疾患を問わず、婦人科手術の多くが鏡視下手術へと移行しつつある。腹腔鏡下手術の術前患者へのICでは、「開腹手術になる可能性を説明すること」は必須と思われるが、逆に開腹手術の経験が少ない医師が増えていくことも危惧される。そのような状況で、開腹手術の意義を再考したい。上級(開腹・腹腔鏡下手術ともに熟練し、悪性疾患の治療経験も豊富である)、中級(悪性疾患の開腹手術に十分な経験があるが、腹腔鏡下手術を開始したばかり)、初級(開腹よりも腹腔鏡下手術に熟練し、良性疾患の経験症例は多少あるも悪性疾患をこれから経験する)の医師より、演者各自の経歴、経験年数、経験症例数(開腹・腹腔鏡下手術の良性・悪性疾患数)、良性疾患・悪性疾患における開腹・腹腔鏡下手術の適応、開腹手術に移行した例(良性疾患、悪性疾患に分けて)を、術中ビデオと術前の画像診断(手術所見とあわせての術後の診断解釈)などをご提示していただきながら、開腹手術に移行した判断基準、その時に考えたことなどをご講演いただき、開腹手術の意義を再考したい。それぞれ違う技術レベルの演者が考える開腹・腹腔鏡下手術の判断基準より、本ワークショップでは、「自分なりに手術を安全に行い、かつ最大限の治療効果の得られる手術を行う」ということをメッセージとして持ち帰っていただきたい。
Key words: 鏡視下手術の限界、開腹手術の意義、手術難易度の術前予測、開腹手術のトレーニング方法、良性疾患・悪性疾患
主題2: 若手に伝えたい頸管縫縮術の工夫:困難な場面での対応
Learning Issues
子宮頸部(頸管)は、妊娠中はgate keeperと呼称されるようにかたく閉鎖され、子宮内に胎児を保持するのに役立つが、分娩が近づくと熟化・開大し、分娩時には胎児通過管の一部となる。この頸管の熟化・開大が、異常に早期におきてしまった病態が頸管無力症である。また従来の頸管無力症と少し概念が異なるが、妊娠中期の頸管短縮は早産リスクと関連することが明らかとなっている。
子宮頸管は外部からの細菌やウイルスの子宮内への侵入を防ぐ砦の役割も持つが、外科的に病態を予防、あるいは進展を防止する方法となると、頸管縫縮術に限定される。しかし、症例によっては、困難な条件の中で、この縫縮を完遂せざるを得ないことも多く、標準的術式を大きく超えた創意工夫が必要な場面が多々ある。そこで今回の企画では、頸管縫縮術という一点に絞り、ベテラン・中堅の術者から若手に伝えたい創意工夫を聞き出したい。
Key words: 子宮頸部、子宮頸管、頸管無力症、頸管縫縮術、頸管短縮、経腹的頸管縫縮術、予防的頸管縫縮術、治療的頸管縫縮術、細菌性腟症、胎胞膨隆、合併症、早産予防
主題3: 腹腔鏡下子宮全摘術の術式習得―悪性疾患を取り扱う立場から/良性疾患を取り扱う立場からアドバイス/ディベート―
Learning Issues
内視鏡技術認定医取得に際して最も基本となる腹腔鏡下子宮全摘術に関して、現在悪性疾患を主に取り扱っている演者と、良性疾患を取り扱っている演者より、それぞれの術式のポイントをご提示いただき、将来、悪性腫瘍手術まで行っていこうと考えている若手医師と、筋腫や内膜症といった良性疾患のみにとどめようとしている若手医師に対するアドバイスとなる内容を討論する。これまで内視鏡学会ではなかなか取り上げられてこなかった内容で、主に悪性疾患を取り扱っている演者と良性疾患のみを取り扱っている演者の技術認定取得の工夫に関して意見交換を行う。
まとめ役よりコメント
私が研修を開始した2002年は、専門医取得までの目標の一つが開腹子宮全摘術(TAH)および帝王切開術の習得でした。しかし、20年近く経た現在、それが腹腔鏡下子宮全摘術(以下、TLH)に変わる過渡期にあります。若手のみならず、腹腔鏡手術に触れる機会が限られていた専門医以上の医師にとっても、その影響を受けないことはあり得ません。本邦では腹腔鏡手術が不妊症治療の一環として開始され、主に良性疾患への適応から広がっていた経緯があります。そこで腹腔鏡手術を黎明期から行っているいわば老舗ともいえる先生方からTLHを供覧していただき、それぞれの工夫やポイントを提示していただきます。そして後半では、悪性手術に腹腔鏡手術を適応するためにTLHを開始した先生方が、どのようにTLHを施行し、それを悪性腫瘍手術に昇華していったのか示していただきます。開腹悪性腫瘍手術の経験から骨盤解剖に習熟した経験があったうえでTLHを行うとどのような利点欠点があるか、実体験を通して学ぶことがあると考えます。良性疾患を中心に扱う立場、悪性疾患を中心に扱う立場という両者が重なるTLHという術式について、お互いの考えを交錯させることでコモディティ化を図る場にできればと考えます。
Key words: laparoscopist, malignant disease, benign disease, TLH
主題4: いわゆる帝王切開瘢痕症候群(So-called CSS:Cesarean scar syndrome)―予防、修復―
Learning Issues
帝王切開後の約7%の患者に子宮創部の筋層欠損や菲薄化(陥凹性瘢痕)を認め、その瘢痕に月経血が貯留することにより過長月経や不正出血などの症状を呈し、続発性不妊の原因になる場合がある。日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会の検討では、このようなことが原因の続発性不妊に対しては手術療法が奏功する可能性が示唆された。手術方法は子宮鏡下手術、腹腔鏡下(開腹)手術、両者の併用での修復術が報告されているが、その選択や手技に関して確立された見解はない。よって術式・適応を含めて議論する機会が必要であると考える。また、本疾患は帝王切開瘢痕部妊娠を来してから診断される例も多く、妊孕性温存のために薬物療法、子宮動脈塞栓術、手術療法を駆使して治療するが、子宮温存が困難な例も経験される。そこで、本疾患の発症の予防という観点から、帝王切開の手技に関する議論も重要である。
① CSSの診断、治療(「腔鏡下子宮瘢痕修復術」)
② CSSを予防するための帝王切開(縫合)手技(prevention)
Key words: Cesarean scar syndrome, Cesarean scar pregnancy, Secondary infertility, Endoscopic repair, uterine suture
特別企画1
「LACC trial 何が悪かったのか?―俺のpreventive technique for cancer cell spillage―」
Learning Issues
LACC trial(初期子宮頸癌に対する手術療法(腹腔鏡下X開腹下)の効果と予後を検証することが目的で、腹腔鏡下広汎子宮全摘出術(LRH)とそれまでの標準術式である開腹下RH(ARH)との比較第III相試験が行われた。その結果は「初期子宮頸癌に対するLRHはARHに対し、同等の予後を持たず、再発並び死亡のリスクを上げる」という極めてショッキングなものであった。本試験では、LRH術式に特異な腟管切除のアプローチ、IUM、気腹圧、などの因子が予後不良の原因として推測されているが、データとしてとられておらず、LACC trialの不良な結果を説明することができない。論文化されたNEJMでは、参加33施設の中で、14施設にのみ再発がみられているということで手術の技量の差ということも推測される。さらにショックなことに、IGCS2018での発表で手術合併症も患者QOLもLRHとARHで大きな差はないという報告もなされた。日本における頸癌へのMISを立ち止まらせずに発展させるためにMISの術式を中心に本sessionを企画した。癌の手術では、「腫瘍から離れて切除する、腫瘍に触らない」という大原則がある。今回のsessionではMISでこの原則をどう守るのか、医師の技量、何事も患者のベネフィットのためにという観点で議論を行う。まず、本邦で行われている鏡視下子宮頸癌広汎子宮全摘出術に関してこの原則を守るためにどのような工夫が行われているかを、エキスパートに動画を用いて解説いただく。その上で、術式の根治性、腫瘍細胞の漏れへの対策という観点での議論の展開を期待したい。
Key words: laparoscopic / robotic radical hysterectomy, early cervical cancer, LACC trial, preventive technique for cancer cell spillage, Recurrence
特別企画2
演題: 子宮底部横切開法のその後~付随する課題の解決に向けた10年の模索と
現状~
演者: 小辻文和先生(高槻病院産婦人科)
Learning Issues:
「子宮底部横切開法」が、本学会で福井大学の小辻教授により初めて発表されてから10年余りの月日が経過した。前置癒着胎盤の帝王切開では、児の安全な娩出や出血量の増大の懸念などがあり術者に多大なストレスを与えるが、「子宮底部横切開法」ではこのストレスが大幅に軽減され、多くの施設で取り入れられるようになった。またウイリアムス産科学のような権威あるテキストにも掲載されるようにもなった。しかし一方で、大きな腹壁切開創、次回妊娠の子宮破裂のリスク等が問題となる。本講演では術式考案者自らが模索してきた問題解決の現状が示される。対象症例の適切な決定や施行上の留意点など多くを学ぶ機会にしたい。
<ご講演抄録>
福島県大野病院事件を機に、前置癒着胎盤に対する「底部横切開」を本学会に報告し、10年を経た。この間、術式の眼前の母児への安全性から、広く行われるようになった。しかしながらこの術式には、①腹壁切開が大きくなる欠点がある。また、②次回妊娠中の子宮破裂のリスクが不明である。講演では、問題解決の模索の現状を報告する。
1. 腹壁切開短縮のために〜羊水吸引による子宮容量減少〜
[方法] 下腹部切開で子宮底部を腹腔外露出できない場合、超音波ガイド下に18Gカテーテル針で子宮を穿刺し、可能な限り羊水を除去した。その後に、底部露出が可能になるまで腹壁切開を延長した。[結果] 14例に羊水除去を試みた。37週5日の症例でも、650mlの羊水除去により臍横までの腹壁切開で底部横切開が可能となった。母児に合併症はなかった。
2. 次回妊娠の安全性評価の現状
[方法] 37例で、術後1年目に創癒合をMRIで評価した。また、6例(7回)での次回妊娠の帝切時に、創部を観察評価した。[結果] (1) MRIでは、28/37例で創部の厚みが周囲の80%以上であり、50%以下の例はなかった。34/37例で創部の血流再開を示唆する所見を得た。妊娠許可に不安を感じた症例はなかった。(2)帝切時の胎盤娩出前の視診では、2/7例に軽度の凹みを認めた。胎盤娩出後の“筋層収縮時の触診による創部の厚み”は、周囲筋層の25%が1/7例、50%が3/7例、75%が2/7例であった。3/7例で胎盤が創部に付着していたが、侵入胎盤はなかった。
【現時点の評価】(1)羊水除去は、腹壁切開短縮の試みの一つである。(2)既報の“切開・縫合法”” “術後の創部評価”“妊娠成立後の管理指針”により、次の妊娠出産が可能なことが示唆される。(3)底部横切開は“最終の避難手段”であることを心し、成績を集積することが、術式の最終評価に必要不可欠と考える。
特別講演 (日本専門医機構 産婦人科領域講習)
演題: 「ロボット時代に考える腹腔鏡手術スキル向上の秘訣」
演者: 宮嶋哲(アキラ)教授(東海大学医学部泌尿器科学)
<ご講演抄録>
1990年代初頭に世界初の腹腔鏡下腎摘除術が行われて以降、医療工学の著しい進化と内視鏡光学視管の改良に伴い、腎泌尿器疾患に対する外科的治療のほとんどは開腹手術から腹腔鏡手術へと移行してきた。
血管シーリングデバイスや3次元内視鏡はその最たるものであるが、これら最新の医療機器を使いこなすことは、手術手技向上ならびに安全な手術施行を目指す上で重要なポイントとなる。一方で画像診断技術を最大限に活用して術前に標的臓器に関する情報収集することも手術を成功に導く大切なポイントと考えている。
2000年に登場した手術支援ロボットdaVinciの腎泌尿器領域への導入により治療方法はさらに進化することとなった。この四半世紀に渡る泌尿器科手術における劇的な歴史的変遷を振り返れば、泌尿器科医の手術に対する考え方は世代のみならず施設によって多様であると言わざるを得ない。したがって、以前我々が指導医から開腹手術を教わり学んでいった方法論だけでは越えられないハードルが存在する。腹腔鏡手術のtipを伝え学んでいくためには、世代間の認識の差を克服するなど、いくつかの解決すべき問題が存在する。泌尿器科手術の現状を踏まえ、我々の様々な試みを紹介したいと考えている。
医療安全講習 (日本専門医機構 共通講習)
演題: 「医療安全って誰のため?」
演者: 大上研二教授(東海大学医学部耳鼻咽喉科学、東海大学医学部付属病院副院長)
<ご講演抄録>
医療安全対策はこの10数年で大きく進歩したといわれる。1999年は医療安全元年と呼ばれるが、この年の横浜市立大学病院での手術患者取り違え事件、都立広尾病院での消毒液誤注射事件、翌年の東海大学病院での内服薬の誤注射事件などは大きく報道された医療過誤であった。それ以前には、医療事故が発生しても“時にあること”“仕方ないこと”として、再発防止の手立てを真剣に考えることは思い至らなかった状況であった。1999年に発行された米国医学研究所の報告書「To Err is Human 人は誰でも間違える」以降、医療事故の頻度が高いことは共通認識となった。
1999年以降厚生労働省を中心に、国を挙げての様々な医療安全対策が進められ、医療安全対策を求める社会的な要請が高まった。医療事故の予防を考えるには個人の責任追及よりは、その原因を究明し組織として防止策を立てていくことが重要である。
近年大きく話題となった、腹腔鏡手術の多発死亡事例や適応外薬剤による多発死亡例などを受け、国は特定機能病院の承認要件の見直しによる医療安全確保に乗り出した。見直し案は全国80余の特定機能病院を対象としており、管理者のガバナンス(内部統制)の強化、医療安全担当副院長の配置、外部監査委員会の設置、内部通報窓口機能の義務化、高難度新規医療技術の導入プロセスの明確化などが主なものである。これらは特定機能病院のみならず、すべての市中病院や一般の診療所においても参考にして対策を取るべき要件とも言える。厚生労働省の求める医療安全対策と東海大学病院の取り組みについて、周術期の問題を含めて具体例をあげて述べたい。
特別講演
①演題: Surgery for ovarian cancer in the United States: goals, strategies and training system
②演題: Surgical approaches and evidenced based strategy for neoadjuvant chemotherapy or primary surgery in Ovarian cancer
演者: Professor William A. Cliby (Division of Gynecologic Surgery, Department of Obstetrics & Gynecology, Mayo Clinic, USA)
Learning Issues
① 米国での卵巣癌治療における手術の役割、Optimal達成のための手術手技のポイント、術者の育成システム、医師の労働仕事環境など、について講演頂く。
Key words: Primary debulking Surgery, Educational system
② 米国でのPDSそしてNAC-IDSとPDSの患者選択のポイントを講演頂く。
Key words: Debulking Surgery, PDS, IDS
William A. Cliby 教授について
Our current research efforts fall into two categories: Translational research and clinical outcomes research. My work in clinical outcomes has focused on quality of care in management of ovarian cancer with a specific interest in surgical management of this disease. We have demonstrated and identified key factors important in overall surgical outcomes and the primary predictors of good and bad outcomes. Through this work we have consistently observed a strong link between radical surgical excision and improved survival and our work continues to increase rates of surgical resection nationally. We have also identified several patient factors which predispose to adverse complications during surgery, as well as institutionally related factors. This data is being used to devise systems that can be used to improve the quality of care in ovarian cancer.
The translation research component that our lab is working in focuses on targeting a unique receptor on the surface of ovarian cancer cells. We have shown that the MIS type II receptor is specifically expressed in over 65 percent of ovarian cancers and minimally in other non-cancer tissues. This therefore serves as a potential target of directed therapeutics in the management of ovarian cancer. We are working with others to better understand its regulation and to test the ability to target the receptor for therapy and improved imaging in ovarian cancer.
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演題: Recurrence and survival pattern according to colpotomy approach fashion in laparoscopic / robotic radical hysterectomy of early cervical cancer patients.
演者: Professor Hee-Sug Ryu (Division of Gynecologic Oncology / Dept. of Ob/Gyn, Ajou University School of Medicine, Korea)
Learning Issues
世界各地13カ国の33施設が参加し約10年にわたって展開された第III相試験LACC trialが安全委員会の勧告により早期中止となった。初期子宮頸癌に対する手術療法の効果と予後を検証したこの臨床試験では、LRHを、それまでの標準術式である開腹下RH(ARH)と比較している。「子宮頸癌IA1期(LSVI陽性)、IA2期、及びIB1期に対するLRHはARHに対し、同等の予後を持たず、再発並び死亡のリスクを上げる」という極めてショッキングなものであった。LRH群の再発リスクは中央観察期間4.5年の時点でなんと18%に達し、死亡リスクはARH群に比べ6倍も高かった。Professor Ryuは、LRHの再発形式にARHと比べて極めて珍しいパターンがあることに注目し、経腹的腟管切除と経腟的腟管切除を比較した後方視的検討にて、前者の再発率は16%で、後者5%に対して極めて高く、癌性腹膜炎が再発例の半数以上に見られたと報告している。LRHの術式に特異な腟管切除のアプローチ、IUM、気腹圧、さらにはそして根治性と術者のLRHの習熟度、これら4点はLACC trialではデータとしてとられておらず、実際にこれが予後にどれだけ影響を与えたかは未知のままである。この点について深く切り込み、その手術手技、その成果についてのご講演をいただく。
Key words: laparoscopic / robotic radical hysterectomy, of early cervical cancer, LACC trial, colpotomy approach, Recurrence.